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zoom RSS サイテスで動植物は守られない

<<   作成日時 : 2018/12/30 16:43   >>

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「こんな小さなトカゲ、どうでもいいでしょ」
それがインドネシアの本音だろう。

年末だというのに、こんな真面目な長文を書いてしまいました。お暇なときに・・・。

Lanthanotus borneensis
https://en.wikipedia.org/wiki/Earless_monitor_lizard
1878年に記載されたミミナシトカゲの生息地が近年になってボルネオ島で再発見され、世界中の爬虫類コレクターがこれを入手しようと沸き立った。実際それはかなり高額で取引された。

動物保護団体はさっそくこれをワシントン条約(以後サイテスと表記)附属書Tに挙げるようインドネシア、マレーシア当局に提案したが、インドネシアには再三の提案も無視された、と先日ツイッターで紹介した記事の中には書いてあった。
最終的にはインドネシアは応じたが、附属書Tではなく、格下げされた附属書Uに収まった。
この件について、当のインドネシアとマレーシアが附属書TではなくUに入れるよう結託した、ともこの記事には書いてある。

ふと考えると、インドネシアにいる動物を守ろうといっているのに、なぜインドネシア側はそれに消極的なのか?
日本やヨーロッパ側から見れば純粋に不思議に思う人もいるかもしれない。
これには理由があり、サイテスに対する若干の誤解もあるのではと思います。

まずこのサイテスの目的を理解している一般の人は意外と少なく、なにかこの条約に万能感すら持っている人もいます。
このブログを読んでいるくらいの方々には釈迦に説法的なことになりますが、まずは確認しましょう。

ワシントン条約:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約

だから色んな貴重な動植物が条約で厳重に守れらてるんでしょ? 
とんでもない!守られてなんていません。そこに大きな誤解があります。
ワシントン条約とは国際取引に関する条約であって、保護に関する条約ではありません。
ウィキペディアで見てみると、さらにこのように書いてあります。
「種の絶滅が危惧される生物のうち、経済生物として国際取引される生物が選ばれている。そのため、いかに絶滅が危惧されていようとも、経済的な国際取引の対象となり得ない生物はこの条約の対象とはならない。」
この条約は経済的価値が高く、国際取引される「種」を選定しているという事がわかります。
まあ実はこれ当たり前の話で、経済的価値の低い絶滅危惧種は自分たちの国の法律でご勝手に、という事です。


さて、インドネシアはなぜこのトカゲをサイテスに入れたくなかったのかに戻ります。
簡潔に言えばインドネシアにとってそれはとても迷惑な話だからです。
このトカゲはパームヤシプランテーション開拓前の環境アセスメントによって再発見されたそうです。
インドネシアで環境アセスメントをするくらいの会社でしたら、まあまあ大きな会社でしょう。個人ではそんなことやりませんから。
ある程度大規模なプランテーションを予定していたでしょう。
プランテーション会社にしてみれば「なんてこった、貴重なトカゲを発見してしまった・・・見つけたくなかった。できれば隠蔽したい。」

この会社が隠蔽しようと思ったかはともかく、それが公になり世界中の爬虫類コレクターが釘付けになり、それを入手しようと試みた。
存在しなかったものが存在し、経済的価値が生まれた瞬間です。
そしてそれが実際に海外で高額で取引されるようになると、動物保護団体も動き出します。
「インドネシアよ、このトカゲを保護しろ!生息地を守れ!これをサイテスに載せるべきだ!」
カリマンタンの田舎で、ただパームヤシのプランテーションを作りたかっただけなのに、外国がなんやかんや口を出してくるようになりました。

「見つけたのは私たちだけど、私たちにとっては保護するべき動物には当たらない。あなた達(日本や欧米)が欲しがったから経済的価値が生まれた。そちらが勝手に経済的価値を作っておきながら、私たちに経済的損失(プランテーション開拓の中止など)を押し付けるのか?」

ちなみに大規模なプランテーション開発になると、何かトラブルがあった場合に死人や行方不明者が出ることもあるような産業です。さらに、
「サイテス付属書Tなどに指定されては、生息地を守れとうるさいだろうし、将来ブリード手法などが確立しても研究目的などの輸出に限られ儲けることもできない。ここはせめて附属書Uを死守しなければならない。でなければ我々は単に損失を被るばっかりじゃないか」

いかなる動植物にも生存権があり多様性にこそ価値がある、という意識がまだ薄いインドネシアがこのように考えるのは全く不思議なことではないです。
先進国と言われる国の人は外から「保護!保全!」と声高に叫んでも、それに伴う経済的損失には目を向けようとしていません。
それではいつまで経っても話は平行線。本当の意味で動植物が保護されていく事は難しいでしょう。
日本でもオオカミ、カワウソ、トキなどの大型動物がすでに絶滅したことを忘れてはいけません。
またクロマグロの大幅な個体数減少に伴い、2010年にこれをサイテスに指定し取引を制限しようという提案に、日本は強く反対したことを付け加えておきましょう。


動物保護団体は今回のミミナシトカゲのサイテス附属書Uへの指定に懸念を持っているようです。
ファームなどで繁殖させた個体は、輸出許可を取ればコマーシャルルートに乗せる事が出来ますが、先日の記事の中には「野生の個体が採取されケースに入れて数時間経つと、それは繁殖した第2世代の個体になる。」と書いています。
つまり野生個体を繁殖個体と偽って取引する可能性があるという懸念ですが、これは野採りのランなんかでも良くある手法ですね。

さらにワシントン条約は国際取引に関する条約のため、野生個体を採取し、国内で販売流通させることは全く問題ありません。それが大きな穴でした。
経済成長著しいインドネシアでは今、ペットブーム、園芸ブームが起きています。
アクアと言えばグッピーとネオンテトラだったインドネシア人が、今やブセやクリプトを植え、ネイチャーアクアリウムを作り、ワイルドベタを飼っています。
サイテス指定種のワイルドネペンテスも大人気。価格は人気種だと1万円近く(月平均給与3万。)の値が付きます。
野生個体を採りまくり、シンタンのブキットクラムのてっぺんに生えているクリピアータ種はもう無くなったと聞きました。
先進国が主導した国際取引を前提とした条約なので、原産地国内でこれほど需要が高まることは想定に入っていなかったでしょう。これでは国際取引をいくら管理、制限したところで、国内法が整備されていなければ全くのザルです。


しかし動植物保護団体の懸念も、愛好家の愛情も全てを無にする破壊力を持ったもう一つの大きな問題。
それはサイテス種に指定されたくらいで、インドネシアは生息地での開発を止める事はないという事です。
オランウータンがいようがお構いなしに森を伐採していく国ですよ。パームヤシプランテーションは国策です。
まさに「こんな小さなトカゲ、どうでもいいでしょ」なわけです。
最初に再発見されたこのミミナシトカゲの生息地も、既にパームヤシのプランテーションになってるんじゃないですかね。
20年以上ボルネオを見てきた自分はそう思います。


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